私も父も元心臓血管外科医であり、得意とする科は循環器科です。高血圧、脂質異常症、糖尿病など動脈硬化に関わる疾患・生活習慣病をメインに診察をしております。
心臓は血液を送り出すポンプの役割をしています。血圧とは心臓から出た血液が血管の壁に与える圧力のことを言います。
血圧には収縮期血圧(心臓が収縮して血液を全身に送り出すときに血管の壁に与える圧力)と、拡張期血圧(心臓が拡張して次の拍出の準備をしているときに血管の壁に残っている圧力)があり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上が高血圧とされています。高血圧になる原因としては、塩分摂りすぎの食生活や運動不足、ストレス、加齢、遺伝など様々な要素があります。
この高血圧の状態が継続すると、心臓は血液を全身により強く押し出す必要があるため、心臓の筋肉は発達し、いわゆる心肥大・心拡大がおきます。更にこれを放置すると高血圧性の心不全を引き起こしたり、急性大動脈解離といった死に至る病気に発展することがあります。
前述したように心臓は血液を送り出すポンプの役割をしており、1日およそ10万回休まず拍動をしています。この心臓には右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれる4つの部屋があります。
一番重要な部屋は左心室と呼ばれる場所で、ここより大動脈と呼ばれる血管を通して全身に血液が送り出されます。全身で血液中の酸素が消費され、静脈血(酸素が少ない血液)となり、心臓の部屋の一つである右心房に戻ってきます。
右心房に戻ってきた血液は次に、右心室へと運ばれ、その後肺動脈と呼ばれる血管を通して肺へ運ばれます。そこで血液は肺から酸素をたくさん受けて動脈血(酸素が多い血液)となり、心臓の左心房に戻ってきます。左心房に戻ってきた血液は左心室へと運ばれ、再び大動脈を通して全身に送り出されます。
このように血液は絶えず循環していますが、心臓には血液が逆流しないための逆流防止弁が4つあります。それぞれ、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁と呼ばれています。これらの弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態を『心臓弁膜症』といいます。
大動脈弁が開かなくてはならないときに完全には開かず、左心室から大動脈へと送られる血流が妨げられます。全身に行き渡る血液が不十分となるため、心臓は血液を送り出そうとし、心臓の筋肉が発達します(求心性心肥大)。
大動脈弁が閉じるべきときに閉じず、大動脈へ送り出された血液が左心室へ逆流します。左心室に充満する血液が増大し、左心室の拡大がみられるようになります(遠心性心肥大)。
僧帽弁の開きが不十分なため、左心房から左心室への血流が妨げられます。その結果、左心房内で血液がうっ滞してしまい、血栓ができやすい状態になります。
僧帽弁が完全に閉じないため、左心室から大動脈だけに送られるはずの血液が左心房へ逆流します。そのため進行すると左心房の拡大がみられます。
三尖弁が閉じにくくなり、右心房から右心室に送られた血液の一部が右心房へ逆流します。そのため進行すると右心房の拡大がみられます。
三尖弁が厚く硬くなり狭くなることによって、右心房から右心室への血流が妨げられます。三尖弁狭窄症はほとんどの場合でリウマチ熱が原因ですが、リウマチ性心疾患が激減した現在では稀な疾患です。
心臓弁膜症は軽度であれば、自覚症状はありません。病気が進行すると、動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状が出現します。病気が進行して、重症になると意識が無くなったり突然死に至ることもあります。
動悸を認める疾患のうち、日常的によくみられるのが心房細動という不整脈です。『心房が細かく動く』と書くこの病気は前述した、心臓の部屋の一つである心房が一定のリズムではなく、不規則に収縮してしまう不整脈です。
そのため心房は心室への有効な血液の送り出しをすることができず、結果、全身に送り出す血液が減少してしまいます。脈が速いタイプの心房細動は放置すると心不全になってしまう可能性があります。また心房内では血液のうっ滞が起きてしまい、血栓を作りやすい環境となっています。
この血栓が心臓から飛んでいってしまうと脳梗塞などの重篤な病気を発症してしまいます。この血栓の作りやすさのリスク評価を行ったものがCHADS2 scoreというものです。
この項目に当てはまる箇所が多ければ多いほど血栓を作りやすい環境にあるということで、抗凝固薬治療(血をさらさらにする薬を内服する治療)が必要となります。
CHADS2 score
Congestive heart failure:うっ血性心不全
Hypertension:高血圧
Age:年齢 75歳以上
Diabetes melitus:糖尿病
Stroke/TIA:脳梗塞、一過性脳虚血の既往
心臓を栄養している血管を冠動脈と呼びます。冠動脈は右冠動脈と左冠動脈があり、左冠動脈はさらに左前下行枝と左回旋枝という枝に分かれます。
この3本の血管によって心臓は栄養されています。大動脈弁のすぐ上の大動脈から分枝されるこの冠動脈を通して心臓の筋肉に血液が行き渡ることで心臓は良好に収縮することができます。
高血圧、脂質異常症、糖尿病に加えて、喫煙習慣・肥満体形・運動不足など様々な因子が作用すると動脈硬化が進み、この冠動脈に粥腫(じゅくしゅ)(コレステロールの塊の様なもの)が形成されます。
この粥腫によって、冠動脈が狭くなってしまうといわゆる狭心症という病気を発症します。少し負荷のかかった歩行や階段の昇降などで胸が締め付けられるといった自覚症状がでます。また放散痛と言って左肩が痛くなることもあります。
この冠動脈が完全に閉塞してしまい、心臓の筋肉に血液が行き渡らなくなってしまった状態が心筋梗塞という病気です。
通常、痛みの持続時間は狭心症より長くなります。心筋梗塞を発症してしまうとステントと呼ばれる金属を冠動脈に留置する心臓カテーテル治療が必要になったり、冠動脈バイパス術という大手術が必要になることがあり、命に関わってきます。
このような大きな病気にならないように高血圧、脂質異常症、糖尿病といった動脈硬化につながるような病気を普段からしっかりと治療していくことが重要になります。
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